先日、トイレに行って戻ってきたら、どこからともなく香水の香りがする。どこからだろうと思って匂いの元を探していると、なんと俺の左手の人差し指と中指の指先からだった。トイレを出るときには石けんを使って念入りに手を洗ったはずなのに、なぜ匂うのだろう。全くわけがわからない。とても不思議だったが、指先が匂って気分が悪いので再びトイレに行って手を洗った。
手を荒いながら、今までもこういうことが何度かあったことを思い出す。いつの間にか左手の指先が匂っているのだ。それも、ついさっき手を洗ったはずなのに匂うのである。
最初は石けんの香料かと思ったのだが、手を洗い終わったときに匂いを嗅いでみると、それは明らかに石けんのものではなかった。おかしいなぁと思いつつトイレを出ると、なんと既に左手が匂っている。
今手を洗ったばかりなのに、既に手が匂っている。洗った直後にはなにも匂いはしなかった。これは確認したばかりである。それなのになぜだ。なぜもう匂っているのだ。俺は狐に摘まれたような気分になり、一瞬混乱した。
「まてまて、順を追って考えよう」と自分を落ち着かせ、時系列でトレースしてみる。まず俺はトイレに入って手を洗った。洗い終わってペーパータオルで手を拭いた。蛇口は自動なので触っていない。この時点では手は匂っていなかったので、石けん、ペーパータオルは除外だ。だが、トイレを出た直後には既に指先が臭かった。ということは、どこからか匂いが移ったとしか考えられない。つまり、今触ったものから匂いが移ったのだ。今触ったものは何だ。今さっき触ったものは? トイレから出るとき何に触った?
俺はハタと気がついた。
トイレのドアノブである。犯人はこれだ!
トイレに戻りペーパータオルでドアノブを拭き取ってみると、拭き取ったペーパータオルからは思った通りものすごい匂いがした。多分トイレでカッコつけ(古っ)して、手も洗わず出て行くバカタリがいるのだ。ドアノブに付着するくらい手に香水をつけ、そのまま出て行く阿呆が。
疑問は解決し匂いの元も断ったが、犯人は未だにこの職場にいる。多分また同じことが起こるに違いない。お前はいい気分かも知れんが、強制的に嗅がされる奴の身になってほしいものだと思う。