asahi.com(朝日新聞社):コンビニ店主「見切り販売」の動き 販売期限前に値引き - ビジネス・経済 (1/3ページ)
以前
コンビニ弁当を値引き販売すればどうなるかと
その補足を書いたが、そんな話は抜きにして「見切り販売」をする上での注意点を思いつくまま書いてみる。
その前に、上記の朝日新聞の記事だが、計数的にはかなりアヤシイ。まず一日の廃棄ロスだが、これが仕入価格なのか販売価格なのかははっきり判別できない。さらに、
複数のオーナーによると、1カ月間に出る廃棄は1日の売上高が目安だという。少なく見積もって売り上げ40万円の店なら、1カ月で40万円分の廃棄が出ている計算だ。
と
西日本のセブンオーナーは、3月から弁当や総菜などの見切り販売を始めた。本部指導員からは「全店に広がったらセブンはつぶれる」と言われた。1カ月間に出る廃棄の量は「半分以上も減った」。値下げをするため、売り上げは5%減(前年同月比)だったが、店が負担する廃棄代が減ったため利益は逆に3割以上増えた。
の下りをまともに受け、かつ見切り販売といえども原価割れしない値付けにしたとして判断すると、月々40万円の半額である20万円がそっくり利益になり、その20万円が30%の利益増ということになる。つまり元々の利益額をXとすれば
(X+20)÷X=1.3
という式が成り立つ。これを解くとXは約66.6万円。これに減価償却などが含まれるか判らないが、コンビニ店主の給料は当然費用計上されているだろう。ということは、オーナー店主であれば約67万円+給料+廃棄減による利益20万円(減価償却が計上されていれば+減価償却費)のキャッシュが手元に残ることになる。意外とおいしいじゃないか。
と、ゲスな勘ぐりはこの辺で止めておいて、実際のオペレーションを考えた場合、見切り販売は困った問題を引き起こす可能性はある。
一番問題であろう事は、販売数が予測しにくくなるということだ。俺の会社でも、ある食料品を売価変更しながら販売したことがあるが、販売数の予測は非常に難しかった。コンビニはPOSからの販売データを細かに分析していると聞く。このデータがほとんど使い物にならなくなる可能性は高い。だって、値引き開始時間と値引き額という、可変的な要素を分析データに織り込んでいかなきゃならないんだもの。考えただけで嫌になっちゃう。
二つ目に、人間の胃袋は大きくならないってこと。以前マクドナルドで100円バーガーを販売したとき、みんな我も我もとハンバーガーを喰いまくった。そのときは他のハンバーガーショップは元より、外食産業全体がマクドナルドに喰われた。何でかといえば、人の食べる量なんて増えるもんじゃないから。弁当も含めた外食産業は全体のパイはあらかじめ決まっていて、そのパイを奪い合う傾向が非常に強い。そもそも廃棄ロスを減らすには、適正な発注数でロスを少なくするか、全体的な販売数を伸ばして相対的に販売ロスを減らすしかない。弁当の販売数を増やす戦略として「見切り販売」をするのであれば、最終的には見切り販売をしなかった頃と同じ結果に収束し、売上減少という結果しか残らないと断言してもいい。
三つ目に、
コンビニ弁当を値引き販売すればどうなるかにもちょっと書いたが、かなり早い段階から見切り販売してしまったり、下手をすれば「横流し」するなど、コンビニのシステムをぶち壊してしまう加盟店が出ないとも限らないってこと。
まぁ、いずれにせよ狙いが「利益アップ」なのであれば、値引き販売はいい結果を招くことはないと思うよ。
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