フロントのマスターシリンダーがイカれ、もしエンジンがかかっても走ることはできなくなったNSR。俺の力ではここまでなので、バイク屋に連絡して取りにきてもらう。
よくよく見てみると、フロント・リアともタイヤの空気が抜けている。ああ、あまりにも無残な姿である。あんなに大事に乗っていたのになんということだ。このNSR、当然ながら今まで地面とキスさせたことはない。つか、最初に買ったCBX400F以外、地面とキスさせたことは一回もない。CBXは何度も何度もコケた。一生分コケた。だからその後のVFR、GB、RG125、NSR(88)、NSR(90)と一度もコケさせていない。このNSRに至っては雨の日に動かした事さえない。それなのに、なんと哀れな姿になってしまったのか。
このバイク屋、腕は良さそうなのでエンジンを動かすだけならどうにか出来るだろう。ただ、腕が良い分、中途半端な修理をしたくないという職人気質がアリアリだ。そのバイク屋に話を聞くと、簡単にエンジンはかからないだろうとのこと。シリンダも錆びている可能性が高いうえ、NSRはシリンダまわりが一体式なのでボーリング出来るシリンダではない。キャブもオーバーホール洗浄が望ましい。ガソリンタンクもサビが怪しい。オイルポンプ、ギアオイル・・・言い出したらキリがないくらいだ。さらに古い形式のため部品もあまりない。Dioの世界(ワールド)はあまりにも強すぎた。
覚悟はしていたが、実際に手放すことが現実味を帯びてくると無性に寂しい。始めてバイクを手に入れてから30年近くになる。思い起こせば俺の傍らには必ずバイクがあった。同時に4台所有していた時期もあった。ここ数年は乗ってもいないが、所有していることだけでも心の支えになっていたことを改めて理解した。
多分NSRほどの操縦性を持ったバイクにめぐり逢うことはもうないだろう。考えられるとすれば
CBR600RRくらいか。しかし、俺は限定解除もしていないし100万を越えるバイクを買う財力もない。しばらくは適当なマシンでお茶を濁すしかない。ただ、バイクが無いのだけは耐えられそうもない。クラブマンのような比較的安い250ccを買うか、250ccクラスのスクーターを買うか、それとも・・・