「適当」というと、なんだかあまりよろしくないイメージが強いような気がする。「あんなのテキトーにやっとけ」とか、「あれ、テキトーなんだよね」とか、手を抜いていい加減にやってるように聞こえるのはそのせいだろう。だが、適当にはもうひとつ「
ある状態・目的・要求などにぴったり合っていること。ふさわしいこと。また、そのさま。」という意味がある。もうひとつの意味は、当然「
その場を何とかつくろう程度であること。いい加減なこと。また、そのさま。」である。
さて、ここで適当という言葉の意味はさておき、仕事などで「適当にやっとけ」と言われることがあるが、このときの適当という言葉の意味は非常に難しい。なぜ難しいのかというと、上に書いた
2つの意味をどちらも含んでいるからだ。つまり、「完全でなくても良いから早くやれ。」という意味と「それなりにまともな結果を出せよ」という意味を含んでいるといって良い。
逆に言えば「適当=いい加減」と解釈してしまえば「テキトーにやってんじゃねぇよ」と怒られ、ちょっと丁寧にやっていると「そんなにきちんとじゃなくて良いからさっさとやれこのスカタン」といわれてしまうのである。ああ、なんたるちあ。
つまり、「適当にやっとけ」という指示を適切にこなすためには、非のうちどころのない完全な状態を理解しつつ、かつそこからどこまで省力化簡素化できるのかを見極めた上でこなさければならないのである。つまり、さまざまなことを相対的に判断して、一番コストが低い状態を判断できる人でないと「適正な適当状態」に落とし込めないのだ。だから「適当にやっとけ」なんて指示は、ものすごく仕事ができる人以外に出してはならない指示なのである。
「適当」の結果は
その人の力量が出てしまう。テキトーテキトーと言いつつ、本当は「テキトーにやっとけ」がいちばん恐い指示だと理解するべきだと思う。