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2008年03月05日
ブレーキングに関する蘊蓄
[うんちくん]
先日人の運転する車に乗る機会があった。他人の車の運転はドキッとする事が多い。その理由は簡単で、操作が自分のタイミングと違うからだ。アクセルを踏むタイミング、ブレーキを踏むタイミング、ハンドルを切る(戻す)タイミング・・・全てが微妙に違う。
特にドキッとさせられるのは、ブレーキングのタイミングが自分の危険レベルを越えて遅い場合ではないかと思う。これは俺の偏見かもしれないが、二輪車に乗ったことが無い人は、得てしてブレーキングし始めのタイミングが遅いように感じる。ブレーキを過信しているようにしか思えないのである。
二輪車は四輪車に比べると格段にブレーキングが難しい。
二輪車はタイヤが2つしかなく、操作系が前輪ブレーキと後輪ブレーキに独立している。なぜ独立しているのかというと、速度やブレーキングの強弱によって適正な前後のブレーキング強度が変わるためだ(と思う)。特にハードブレーキングではリアブレーキなど無いに等しい。これはハードブレーキング時にはその加重のほとんどが前輪に掛かるためで、レースなどで観るとハードブレーキング時にリアタイヤが地面から離れていたりするのはそのためだ。ハードブレーキング時には一輪走行しているようなものなのである。タイヤが宙に浮いた状態でリアをブレーキしても無意味なのは誰が考えたって判る。
コーナリング時のブレーキングもなかなか難しい。トラクションを稼ぐための軽いブレーキングは「あり」だが、車体をリーンさせた状態でのフルブレーキングはほぼ不可能だ。二輪車は車体を傾けることで重力と遠心力のバランスを取ってコーナリングしており、ここに急激な荷重移動が起こればそのバランスは一気崩れてしまう。フロントフォークで前輪を保持している二輪車は、ノーズダイブ(フロントフォークが縮むこと)すればどうしても直進力が強まってしまうのである。コーナリング中にブレーキングすると、二輪車によっては急激に車体が起き上がるものさえある。極論すれば、二輪車は直進状態でしか止まれないのである。
物理的な制動力で言えば、もしかしたら四輪車と二輪車は大差ないかもしれない。先にも述べたように二輪車のフルブレーキング時はほぼ一輪で止まるようなものであり、慣性力を摩擦力で熱に変えるブレーキングに於いて二輪車は非常に不利と感じる人も多いかも知れない。しかし単純に計算してみれば、オートバイの場合は一輪に掛かる加重は(車重+人≒250Kg)÷2×(速度の二乗)で、車の場合は(車重+人≒1000Kg)÷2×(速度の二乗)÷4となりほぼ変わらないと言ってもいいだろう。だが、大きな違いはやはりタイヤの数で、前輪がグリップを失ったらほぼおしまいの二輪車に対し、四輪車はまだ一輪がグリップを失ってもあと3つもタイヤがある。どちらが安全性が高いかなど言うまでもない。
なにより二輪車は、自分のミスがそのまま転倒などの自分の体へのペナルティとなって返ってくる。このような特性から、オートバイ乗りはタイヤのグリップを左右する路面状態とその制動距離に過剰な程の注意をはらいながら運転せざるを得ないのである。結果として安全マージンの取りかたが四輪車より大きくなり、かつ危険察知能力も高くなるのではないかと思っている。
さらに四輪車にはブレーキサーボ機能やらABSやら、四輪車はその車重を制御するための様々な仕掛けが付いている。ただでさえお気軽に止まるのに、さらに安全性を向上させるしくみが付いているのだ。しかし、その安全性にかまけて過信は頂けない。その過信が、俺の体に染み込んだ危険察知センサーを作動させるのである。
posted by oyajiman at 2008年03月05日 01:04:08
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