今だに
コンビニ弁当を値引き販売すればどうなるかというエントリにコンスタントにアクセスがあるので、ちょっと調子にのって値引販売について書いてみる。
今はデフレでどこもかしこも安売りばかりだが、一番目につくには50%割引とかという単純な値引販売だ。この値引販売については、以前にもいくつか書いたことがある。
商品価値は値段で決まる
安売りはだめだっていっただろ
「100円マック」でも儲かるなんてレアケース
これだけでは、なぜ値引販売はよく考えて行わないと大損するのかわからない人も多いだろう。
俺も以前経営者から「売上確保のために安売りしたらどうか」と言われたことがある。その安売り方法が安直な割引販売だったので、これはまずいと思い「参考までに」と経営者に提出したのがこれに近い奴だった。少し考えれば誰でもわかるし、あまりにも当たり前のことなんだけどね。
まず定価で1個1000円の商品があったとしよう。その商品の材料費は300円だ。これをそのまま定価で販売すれば粗利益は700円。工場とかの場合はこの額から労務費とかも引いて粗利とするけれど、ここは話を単純にするため労務費は考慮しない。
この商品を10%値引して販売すれば売価は900円となり、粗利額は900円-300円=600円となる。さて、気分的にはたった10%、100円の値引なのだが、粗利額は600円÷700円=85.7%まで下がる。定価販売と同額の粗利を稼ごうとすれば、販売個数を700円÷600円=1.1666の16.7%もアップさせなくてはならない。そして、材料費率30%であれば70%以上値引きしたら原価割れだ。
これをグラフにすればこうなる。超当たり前だね。
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下のグラフのとおり、材料費率が上がれば上がるほど粗利額は落ちていく。これも当たり前。
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ちなみに、粗利同額を叩き出すためにどのくらい販売数をアップさせなければならないかは次の式で表される。
必要アップ率=定価時の粗利÷値引き時の粗利
=(定価×粗利率)÷(定価×粗利率-値引額)
=(定価×粗利率)÷(定価×粗利率-定価×値引率)
=粗利率÷(粗利率-値引率)
簡単に30%OFF!とか言うけれど、材料費率40%の商品を30%OFFで販売したら、定価販売時の2倍売らなきゃならないわけ。だけど買う方から見れば「たった3割引き?」でしかない。3割引いて2倍売れる商品ってそんなにないんだよな。だから通販とかでは粗利を稼ぐために2個でいくらとかで販売するんだよ。1個で値引きするより2個で1個分以上の粗利を獲得できる値段で売った方が価値が上がるし粗利を稼ぎやすいと踏んでいるんだよね。
この商品は1人なら1時間に5個まで、2人なら11個、3人なら18個までというように、人数が増えればその生産性も向上するものとしよう。で、製造人件費を1000円/hとして、その製造人件費を加味した粗利額を算出すると、定価販売で5個販売すると2500円となる。この2500円を上回る粗利を稼ぐに組み合わせはどうなるかというと、こんな感じになる。
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40%以上値引きしたら4倍の20個売っても追いつかないんだよね。これを骨折り損のくたびれ儲けと言わずしてなんという?
大量生産・大量販売の場合、労務費の占める割合がまったく変わってくるので、生産性アップの分くらいは値引きしてもOKだろうけれど、売るのは大変だよね。売れずにそのまま持っていてもどうしようもないので、運転資金(要はキャッシュ)欲しさに投げ売りするところもあるわけだな。
これ以外にも値引きした商品が客引き用であったりとかする場合もあるので、商品数が多い場合は値引きが全体の粗利をどう変えるかを十分考慮するべきなんだよね。特に飲食店とかでランチセットなどのようにその物自体で完結する商品を値引きすると、いままで定価で食っていた人が値引き商品に走るだけで、客数アップどころか売上減になってしまうことが多い。だから新メニューを投入したりビール1杯だけ原価でみたいな次につながる奴を安く販売するわけ。
そんな考えなしに単なる値引きに走ると、必ずや行き詰まるよ。