なんにもない

友が酒を飲みながらこんな事をつぶやいた。
彼女と別れてしまったら、今の俺には何もない。彼女がいなくなる事を考えるだけで胸にぽっかりと穴があいてしまったような感じになる。

ダンナに対する嫉妬とかそういう感情だけでなく、彼女が俺のことで悩み、つらい思いをしているのは耐え切れない。でも、彼女がいなくなることは俺は耐え切れない。あきらめきれないんだ。いなくなるくらいならいっそ死んだほうがずっとマシだ。彼女と二人でどこかに行ってしまいたい。何もかも捨て、二人で生きていきたい。

もし彼女と会えなくなったら、俺はどうやって生きていけばいいんだ。顔も見れず、声も聞けず、連絡も取れなくなったら、もう俺は生きていけない。彼女が好きなんだ。どうしようもないくらい好きなんだ。

俺は彼女を忘れようとしてみた。彼女と疎遠になって、その間ずっと忘れようとしたんだ。でもダメだった。その思いは日に日に強くなっていくんだ。彼女とずっと一緒にいたい。彼女と話して、いっしょに飯食って、一緒に寝ていたい。

俺はどうしたらいいんだ。こんな切ない思いをするくらいなら、死んでしまったほうがずっと楽だと思う。俺が死んでしまえば彼女もあきらめられるかもしれないしつらい思いをしなくて済むのかもしれない。つらすぎるよ。

そういって友は涙した。

コイツが泣くのを、俺は初めて見た。こんな強気な奴が泣くこともあるんだと感じた。よほどこたえているんだろう。コイツの彼女に対する思いの強さを嫌と言うほど味あわされた。

俺はコイツに何も言えなかった。慰めならいくらでもできる。しかし、そんな安っぽい事をしてもなんの気休めにもならないだろう。これが単なる一時期的な感情だったら笑って済ませたかもしれない。だが、コイツはもう何年も彼女に恋焦がれ、もう自分では抑えることが出来ないくらいにまでなってきているのだ。こんな言葉を発するくらいどうしようもなくなってきているのだ。

俺はコイツに何もしてやることは出来ない。ただ話を聞いてやることしかできない。今日の酒は苦い味がした。

posted at 23:32:17 on 04/11/05 by oyajiman - Category: dame

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