俺はほとんどオフロードマシンには乗ったことがない。そんな俺がなぜこのマシンに載ったことがあるのか。その理由は今ではあまり考えられないものだった。
ある日、寮に住む友人がニヤケながら「お前のバイク借りちゃったー」と言ってきた。俺はそいつにバイクを貸した覚えなど全くなかったのだが、そいつは「いやー速いなー」とかニマニマしながら言いやがる。
「はぁ?お前にバイクなんて貸してないじゃんか。」というと、そいつは「お前のバイク、俺のキーで動いたんだよ。」と言った。
は?なにそれ?
すぐには言っている意味がわからなかった俺。ちょっとした間の後、おいおいホントかよと思い「ちょっとお前のバイクの鍵みせろ」とそいつからキーを奪い俺のと比べてみると、なんとまぁキーに打刻されている番号が全く同じだったのである。冗談抜きでそいつのキーで俺のマシンが動いたのだ。当然逆もしかり。そいつのXL125は俺のCBX400Fのキーで問題なく動く。
ちょーむかいついたので「お前のバイクも借りるからな」と捨て台詞を残してそいつのXLで遊びに出かけた。腹が立っていたのでサスのストロークがとても長かったこととやっぱり125だよなというエンジンパワーくらいしかマシンの印象は残っていない。
その頃のHONDAのキーは打刻が3桁しかなく、その番号が同じものは全く同じキーだったようだ。つまり1000台に1台は同じキーで動いたのだろう。その偶然が、たまたま同じ寮に住む奴に起こったわけだ。それでも自分のキーを人のバイクに挿してみようなんて奴もそうそういないだろうから、1000種類しかないキーでも良かったのかも知れん。今じゃ考えられないことだけどね。